よーしあーきーと時々ラテとはろ&ちび

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読書感想文

『僕の声は届かない。でも僕は君と話がしたい。』近藤 崇(感想文)

更新日:

    《是非、彼を応援する意味でも、病に倒れたらこうなるとの予備知識にも本書を読んでおいた方が良いと、私は思います。》

1、将来嘱望された医師から一転

今まで、これまでない位に感情移入を出来た本はなかった。
おそらくは、経歴には雲泥の差があれど、同じ年で誕生日も1ヶ月程しか変わらないといった環境があるのかも知れない。
作者は医師です。医師という仕事に真剣に向き合って取り組むと、ブラック企業なんてものは非ではない。
加えて人の命を預かる重圧。作者は人のために重圧などをはね除けるべく、日々早朝から夜遅くまで、自身の技術力の研鑽に励んでいた。
しかし、医師として使命に燃えていた最中28歳にして、脳梗塞という病で倒れてしまう。忘年会の幹事を務めている最中に倒れる。
すぐさま、病院に運ばれたが当日には手術が行われず、翌日になって頭に溜まった血液を排出する手術がされた。
いくら自身が医師であっても、自分の身に降りかかる事を想定していなかった為なのか、前兆があったにも関わらず、それがどういった事なのかを気にも留めなかった様です。
猛烈に働いた結果、倒れてしまっては、正しかったとは言えないかも知れない。
また、全く逆の自称医師と名乗り、医師に成りきれなかった様な方の働き掛けも、正しいとは言えない。
しかし、どちらも全てが間違っているとも、言えないのかも知れない。
作者の言葉を借りると、「人生一度きり」。
自分の信じた道を、とにかくひたすらに突き進むしかないのかも知れない。

2、生還→絶望→希望

意識が回復した時は術後4ヶ月経っていた。倒れて気が付いたら、耳は聴こえず声も出ない。身体も麻痺により、ベッドで寝た切り。皮膚の感覚、痛みと、意識や意思がしっかりと残った。
『閉じ込め症候群』といった状態。
倒れた次の瞬間、この様な状態になった方々の気持ちというのは、他人が理解しようとしてもこれっぽっちも理解出来ていないと思う。想像を絶する苦痛や絶望。
しかし、私は若くして身体が動かなくなってしまった方を、少なからず直にこの目で見てきた。関わりも持たせて頂いた。どういった生活になるかを知っている。
作者は、耳が聞こえず、廃用症候群の著しい筋力低下の為、言葉も発せられない。
目は開いたが、どうにも反応がない。周りの人たちは、自分たちの考える、自分たちに出来ることを精一杯行った。
しかし、それは「結果」として、本人にとっては更なる苦痛にしかならかった。人に伝えられない絶望。死ぬことを願ったが、それすらも叶わない。
その様な状態で2ヶ月弱。母から「耳が聞こえないの?」と、紙に書いて目前に差し出される。
この時、「震えた」「心の中でジャンプをした」と表現されている。
そして、「生きてて良かった!!!!」と。
生きていたからこそ味わうことの出来た歓喜の瞬間。こうして、私が言うのも失礼に当たるかも知れないのだけども。

3、希望→現実

希望を持ってリハビリ病院へ転院する。しかし、待っていたのは自立は叶わないといった現実。
脳の侵された領域もあるけど、倒れてから4ヶ月意識が戻らなかった為に、リハビリの開始時期の遅れ、また廃用症候群によって落ちた筋力というのは、もう二度と戻らないんだそうだ。
それでも、出来ない自分を受け入れることで、前進できると。出来る事を増やして行けば良いのだと、自身の状態を受け入れたのだそうだ。
いきなり、無知の状態でこの様になったら、どうだったのだろう?
逆に、医師だった為に、さらに奈落の底に落とされていたのかも知れないのだけど。
そこから、少しずつ体が動くようになり出来る事が増えた。
この出来事に私は思わず「やった!」と言葉が出ていた。
私自身もうれしかった。本を読んで、泣く事はあっても(動物もの)、喜ぶ事はなかった。それだけ同じ年というだけで、とても親近感を持って読んでいたのかも知れない。
また、リハビリの名医との出会いにより、結構な食事も出来る様になったとの事。味は良く分からない様ですが。
長いリハビリを経て、現在では、自宅で家族と過ごし、ipadを駆使しコミュニケーションが取れているようだ。
facebookでも、その様子が窺える。しかし、多重障害を患っている事には変わりはない。

4、人生って素晴らしい

そして、絶望の淵からここまで来れたのも、家族や友人の支えが大きかったと綴る。
母の熱心な看病、毎日のように病室に訪れる友人たち。
これは、作者の人柄もあったのだと思う。
学生時代から、素直に沢山の人と接し、真摯に物事に立ち向かっていた人柄もあって、多くの友人、信用して貰える人がいたのだと思う。
彼が、積み重ねて来た結晶でもあると思う。
ひねくれ者には、見舞いなんて来て貰えないよ。

最後に著書(作者)の言葉より。
『人生って素晴らしい』

僕の声は届かない。でも僕は君と話がしたい。

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